[戸塚たくす]ゼクレアトル~神マンガ戦記~
ゼクレアトル~神マンガ戦記~ 1 (裏少年サンデーコミックス)
- 作者: 戸塚たくす,阿久井真
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/11/16
- メディア: コミック
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manga oneにて制限付き無料。
雑感
最終話まで読んだので。再掲。
作画が付かなくなり、ネームだけになった辺りから非常に質が上がった。作者が切羽詰まってマンガ内で現状を世界観にそって説明するという奇跡のリアルタイムメタマンガという全く新しい作品が完成してて非常に興味深い。
そして、この作品でも説明されるここで終わるのは許さない、完結までは身銭を削ってでも持っていくという信念やらマンガ愛は素晴らしい。しかし、無理に自己ブランディングに力を入れず、自身のサイトでじっくりと完結でも良かったのではとは思う。
4次元人との恋愛物としてはかの有名な「ever17」がある。この作品も複雑で普通のギャルゲーとして楽しんでいる人が多く、理論部分は適当に流している人も多かった。その次の作品である「remember11」は理論の塊のような作品かつ未完結なので考察サイトを熟読しなければ何が起こっていたかさえ分からない。当然「remember11」は売れなかった。
つまり理論的に面白い作品は儲からないのだ。しかし、「remember11」の完結編が出たら私は1万しようが必ず買うだろう。つまりニッチだが高い需要がある。技術書と同じと考えることもできる。なので戦略として少ない読者に高く売るが正解なのではないかと思う。
だが、高く売る前に必要なのがファンコミュニティの形成だろう。「remember11」はファンコミュニティと合わせて初めて良い作品となった。ゲーム単体では凡作も良いところだろう。理論系の作品はどうしても物語の中では説明しきれない。そこでファンに補完してもらうのだ。そうする事により理論的にも正しく面白いバックグラウンドが自動で生成される。
このコミュニティを上手に形成した例として「ひぐらしのなく頃に」がある。作者が考えていた以上の面白い理論展開や面白いストーリー展開がユーザから飛び出してきた。しかし、ここで作者のプライドが邪魔をしユーザの考えを一蹴したのが良くなかった。wikipediaを見れば分かるように集合知という物は個人では勝てないと認識すべきだ。
理論的な作品で成功した作品に「STEINS;GATE」がある。この作品が成功したのは理論を世界観にのみ持っていったところにあると思う。つまり、知識レベルによって作品の印象が変わるような作りになっていないのだ。タイムリープする前にタイムリープの理論を説明するが、それ以後は「ドラえもん」のタイムマシンと変わらない。主人公がタイムパラドックスに気をつけて生活することもなければ、鶏が先か卵が先かのジレンマに陥ることもない。つまり、難しい理論と1対1対応する便利なひみつ道具を用意することで「ドラえもん」レベルの知識水準でも楽しめるように作ってある。
実は「STEINS;GATE」の科学部分を楽しんでいる人数はかなり少ない。ほとんどがSF的な世界観を楽しんでいる。主人公の奇行を、ヒロインの愛嬌を、絶望を、信頼を、人間ドラマを楽しんでいるのだ。つまり「ゼクレアトル」が売れないのは当たり前なのである。面白ければ面白い程売れない。
理論的な作品は隠すぐらいで丁度良い。理論を背景に王道の物語を作れば漏れでた特徴が個性になる。理論的な作品好きからは絶賛されるだろう。売れるかどうかは王道の物語の質になるが。